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2010年8月18日 「いやな感じ」 高見順

本日の読了本。

「いやな感じ」 高見順 (角川文庫)

初版の単行本も持っているが、これは角川文庫版。

高校生の頃、戦後日本文学史年表にあった、このタイトルに妙に魅かれた。

純文学らしからぬモダンなセンス。

そして刃のような殺気を感じさせる、「いやな」が「嫌な」でもなければ「厭な」でもない「ひらがな」でなければならないその語感。

物語を読む前に、既にタイトルにノックアウトされていたおいらなのであった・・・

比較的、入手は容易であり、すぐに手に入れてはいたのだが、戦前のアナーキストを主人公にしている、と聞いて「読みたい」と思うものの、かえって読みはじめるのが怖い気がして長年、未読であった小説である。

今回、本の山の中から出てきて、覚悟を決めて読みはじめたが、いや面白いの何のって!

日本の純文学にはなかったタイプの小説であり、長い間、純文学界が評価を下せずに来たのではないかという感じもする。

読んでおいらが思ったのは、テロリスト、テロリストとかっこつけてる主人公が、犬やまったく関係のない一市民などばかり殺している無様さであり、主義や思想が金儲けや俗世間にまみれていくその哀しさである。

あと、テキヤや刑務所での隠語が多用されて、そのことが独特のリズム感をかもし出している。

「人間喜劇」の部分や隠語(広島弁)の多用など、深作欣二の「仁義なき戦い」を思い起こしたが、その深作はこの小説の映画化を「仁義なき」より前に考えていたようだ。

「仁義なき」や「現代やくざ」を撮るときに、この小説のことが頭に浮かんだろうか?

現代の眼から見て、間違いなく戦後日本文学に屹立する金字塔である、と思う。
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by maiuMY | 2010-08-18 23:15 | 高見順 | Comments(2)