人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

おいらとJazzと探偵小説(ミステリ)と                      You and the Jazz and the Mystery

2018年11月6日 「完全犯罪 加田伶太郎全集」 加田伶太郎

本日の読了本。

「完全犯罪 加田伶太郎全集」 加田伶太郎 (創元推理文庫)

こりゃ懐かしいなぁ。

新潮文庫で何度か読み返したもんだ。

最初に読んだのは表題作。

確か講談社の「現代推理小説体系」の「名作集」だった。

小学生のころだったが、初読の印象はあまり芳しいものではなく、バークリーの「毒入りチョコレート事件」をまねた趣向は面白いと思ったものの、あまりに機械的で分かりにくいトリックに感心しなかった。(今回の久々の再読では、相変わらずトリックは大したことないと思いつつも、全体的に細かいところまでよく練られていて感心した)

でも新潮文庫で全作品を読んだときは何と言っても「失踪事件」にノックアウトされた。

多分、今の若い読者が読むと「ふ~ん」という感じだろうが、それはその後のフォロワーたち(特に新本格派以降の作者たち)がこの趣向を使い尽くしたからである。

このちょっとした学生の失踪が大きな犯罪に結びつくというシュールな残酷さ、名探偵が論理的に下田半島の1点を推理していく、ハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」に通ずるロジックの面白さに驚喜したものだ。

今回の再読(多分、4回目くらいか)では、あまりにも都築道夫の史観にぴったりの流れにびっくりするが、まあこれは福永武彦が意識してやったというより、都築道夫が己の主張に沿う実作を発見した、という方が恐らく正しいだろうなぁ。(時代を画する評論というのは得てしてこういうことがある、と思う)

いずれにせよ日本推理小説史に輝く名短編集の一つであることは間違いない。

by maiuMY | 2018-11-06 20:01 | 探偵小説 | Comments(0)

ジャズと古本を愛するおいらの日々

by maiuMY