2018年 07月 07日
2018年7月6日 「花殺し月の殺人」 デイヴィッド・グラン
「花殺し月の殺人」 デイヴィッド・グラン (早川書房)
こりゃ凄い!
堂々の、今年のベスト10上位候補。
評論家諸氏が絶賛するのもむべなるかな。
一般読者のネットの評価がイマイチなのだが、翻訳物特有の登場人物名の把握が難しいこと(この登場人物表はあまりに不親切だ)と、あまりに評論家たちが絶賛するので事前の期待値が高過ぎたことが要因のような気がする。
<以下、もろのネタバレはないが、できれば読了後に>
どうも低評価を下した一般読者はこの本をノン・フィクションではなくミステリーとして読んじゃったんじゃないか?と思う。
さすがに小説ほどのどんでん返しはあり得ない。
この作品の肝は三部構成の、その構成そのものにあり、恐らく著者自身は最後の結末はかなり前から把握していたのだろう。
それをこういう構成にしたことそのものがトリックなのである。
テイストは違うが、夢野久作の「瓶詰の地獄」に通ずるものがある。
そしてこの作品も章を変える毎に、地獄の底にまだ地獄の底がある、そのことが歴史的事実だということ(まだ孫たちが生きて心に傷をおっている)に読者は衝撃を受けるのだ。
ある登場人物の次の言葉がすべて。
「陪審が殺人事件だと見なすかどうか、わたしには疑問です。陪審たちが判断するのは、白人がオセージ族を殺すのが殺人なのか、それとも動物虐待にすぎないのかという問題なんです」
わが国にもアイヌや沖縄の人々の問題がある。
さすがに西部開拓時代(をひきずる時代)の無茶苦茶さはないが、他人事ではないな。
スコセッシとディカプリオのコンビで映画化するそうだ。
観たいぞ!!!