2017年 08月 26日
2017年8月26日 「光の塔」 今日泊亜蘭
「光の塔」 今日泊亜蘭 (ちくま文庫)
【ネタバレあり】
ちくま文庫による名作の復刻。
おいらは小学6年生か中学1年生の頃、ハヤカワ・SF・シリーズで初めて読んだ。
子どもには正直、難しい内容で(実験的言語の趣向があったり軍人風の言い回しがあったりして難しかった)導入部で何度も挫折しかかったことを思い出す。
それが第1部の途中からはもう「巻置く能わざる」という感じで夢中で読みふけったものだ。
かなり久々の再読であるが、初読の時も思った「しかしアナクロニズムだなぁ」という感想はやはり思ってしまう。
子供心にも主人公の奥さんが悪者になっているのに、「そりゃどう考えてもあんた(主人公)が悪いだろうが」と感じたものだ。
しかも今回、まったく覚えていなかったのだが、「光」をやっつけるのは何と「日本軍人の切腹」なのだ!
う~ん。。。。。。
その意味ではむしろ「現在」の方が親しまれるのかもしれないなぁ。
日下三蔵氏は解説で「序章に仕掛けられた叙述トリック」と言っているが、これは「伏線」じゃないのかなぁ?(おいらの勘違い、読み違いかもしれないが)
それを言うなら犯人のところでアガサ・クリスティー(より近いのは横溝正史?)をやっているよね。
それにつけても大量の伏線の妙が冴えわたり、メインガジェットのSF的な「解説」が冴えわたり、ミステリー的趣向もべらんめい調の会話も冴えわたり、見事な名作である。(しつこいようだが、アナクロニズムはちょっと鼻につく。)
おいらは東都ミステリー版もハヤカワ・SF・シリーズ版も持っているが、このちくま文庫版はカバーがカッコ良いのでまた買っちまったぜ!