2015年 09月 21日
2015年9月21日 「道徳の時間」 呉勝浩
「道徳の時間」 呉勝浩 (講談社)
ぼかしながらも若干、ネタバレありです。未読の方はご遠慮下さい。
ネットでも評判が悪いが、おいらにとっては乱歩賞受賞作で久々に興奮した一作。
過去の事件と、現在の事件は確かに何の関係もないが、主人公の主観及びテーマの中では関係があり、そのこと自体も「物語」の中でのリアリティを十分持っている。
最後の犯人の動機が評価の分かれるところだろうが、ここもおいらには十分フィクションの中でのリアリティがあった。(おいらはわざとらしい「あざとさ」は大嫌いな性質だが、本作はそこを見事にクリアしていると思う。)
何より現実の世界でも、あの少年の出版問題があったし。(まさに事実は小説より奇なり)
そして実に魅力的な謎とその展開。おいらの感想は、選者の一人、辻村深月の選評に一番近い。
素晴らしくグイグイ惹きこまれていった。
文章が悪いと非難されているようだが、確かに最初とっつきにくい文体だが、むしろ文章は上手い!
ハードボイルド系の省略された文体だが、かなり新しい文体を獲得していて、かえって評価したいくらいだ。
今年の国内ミステリでも上位作。