2010年 04月 18日
2010年4月18日 「ながい旅」 大岡昇平
「ながい旅」 大岡昇平 (角川文庫)
大いなる感銘を受けた・・・・・・
亡くなった俳優の藤田まことが「明日への遺言」で演じた岡田資中将のドキュメンタリー(原作かな?)
岡田中将は写真で見ると、「硫黄島からの手紙」で栗林中将を演じた渡辺謙に似ている(少し優しくした感じ)男前で、いくら何でも藤田まこととはなぁ・・・・・・
右翼系の作家でなく、反戦作家である大岡昇平が書いているところに価値がある。
「私は昭和四十三年『レイテ戦記』執筆中、軍人は上級になるほど政治的になり、ずるくなるが、軍司令官クラスには立派な人物がいることを知った。」という文章に全てがある。
自らのB級戦犯裁判を戦争に続く「法戦」と位置づけ、軍の名誉のために戦いつつも部下をかばい一人罪を背負って絞首刑に処されていく。
最初は敵対していたバーネット検事たちまでが、岡田中将のひとり罪を背負おうとする姿勢に感銘を受け、何度か岡田を救おうと助け舟を法廷でだすのだが、岡田中将はそれを拒否する。
バーネット検事は後に助命嘆願書にサインまでするのである。
それにしても、弁護人になるフェザーストーン氏やラップ判事の公正さ、法廷に捧げる真摯さは特筆に価する。
まあ、このアメリカ流「民主主義」に日本人はコテンとやられたのであるが、それでも尊敬に値する方々である。
この本のもう一人の主役であろう。
それにしても、解説は何とかならなかったのか。
どんな人物に対してもいろいろな意見はあるだろうが、「大岡の目には、岡田という軍人は「立派な人物」と映ったのであろう。」なんて嫌味なかぎかっこをつけるぐらいなら解説を引き受けなければ良いのに。
解説だけは不愉快である。