2009年 05月 17日
2009年5月17日 「リラの頃、カサブランカへ」 小川国夫
「リラの頃、カサブランカへ」 小川国夫 (角川文庫)
おいらの世代だと、角川文庫といえば春樹氏が、当時、絶版だった推理小説(特に短篇全集と銘打ったものが素晴らしかった)を再発してくれた文庫というイメージであるが、個人的には、角川源義氏の「角川文庫発刊に際して」の格調高い文章と、純文学系やその他の作家の装丁や挿絵が素晴らしい印象が強い。
安藤鶴夫の「巷談本牧亭」や「寄席紳士録」なんかは、やはり角川文庫版で持っていたいし。
小川国夫の諸作も、池田満寿夫のカバーなんかむちゃむちゃカッコよい!
この文庫は、野見山暁治だが、やはり小川国夫の地中海のイメージをうかがわせる良いカバーや挿絵だ。
そして何といっても、赤の背表紙が効いている。
題名も、ちょっとセンチメンタル過ぎる気もするが、良いなぁ・・・・・・
出世作「アポロンの島」の前に書かれた習作の位置づけの作品だが、既に小川国夫らしい地中海指向やクールな(ハードボイルドと言ってもよい。実際、小説の中で登場人物はよく「探偵小説」を読んでいるが、この「探偵小説」は恐らくハードボイルドやノワールだと思う、おいらの推理では)文体から叙情味を出す、後の村上春樹に通じる方法論などが見える。
若書きの部分もあるにはあるが、純文学作家には珍しい熱狂的なファンのいるこの作者らしい本だ。