本日、1冊目の読了本。
「七人の侍 ロケ地の謎を探る」 高田雅彦 (アルファベータブックス)
表紙のカバー画で損をしている感もあるが、こりゃ「七人の侍」愛に貫かれた傑作!
先行する資料の恩恵を受けながらも、ロケ地を探っていく過程は下手な推理小説より興奮する。
それにしても世田谷区大蔵がこんな田舎なんてびっくりだね。
確かに昔の小説とか読むとたまに世田谷は東京扱いされてないところがあるもんな。
「七人の侍」という映画は確かに名作なのだが、個人的には結構、玉に瑕が目立って「これほどすごい映画なのにもったいないなぁ」という感じの映画。
脚本はもう最高で(それでも勝四郎が久蔵に「あなたは本物の侍」みたいに言うセリフはいかにも黒澤映画っぽい恥ずかしさである)特に菊千代のキャラクター設定は天才的である。
ハリウッド版リメイクでは無視された菊千代のキャラクターこそがこの映画の肝なのだが、まさに黒澤明のマッチョや貴族にあこがれながらもそうなれない自分の劣等感(3度従軍した小津安二郎と違って(軍部に顔の効く東宝の策略だったとはいえ)従軍忌避)や、百姓(戦後の日本国民や、戦後民主主義への嫌悪)への愛憎入り乱れた感情がぶち込まれた秀逸な人物造形。
フェリーニが一番好きなシーンとして挙げた炎上する水車小屋で菊千代が赤子を抱き上げて「こいつは俺だ」と叫ぶシーンはまあ所詮、戦勝国の奴らには分らないだろう。(イタリアは正確には戦勝国だが実質的に敗戦国だよね)
そもそもこの映画が太平洋戦争がモチーフの一つってことも判ってないかもな。
もちろん雨中の決闘シーンはアクション映画の最高峰の一つだろう。
でも玉に瑕っていうのは、勝四郎を当時、三十歳の木村功に演じさせたこととか、ラブシーンも恥ずかしさいっぱいの黒澤映画調だし・・・・・・
若き日の黄門様がスローモーションで倒れるというその後のアクション映画に多大な影響を与えたシーンもやはりスローモーションの下品さを免れていない。
ラストの勘兵衛の名セリフもおいらは映画館で観たときにずっこけたもんなぁ。
(大体、黒澤映画はラストのセリフがダサいことが多い)
この本に戻って、貴重な写真の数々にもしびれます。
これは映画ファン必読であろう。