2017年 10月 08日
2017年10月8日 「宿命と真実の炎」 貫井徳郎
「宿命と真実の炎」 貫井徳郎 (幻冬舎)
貫井徳郎という作家はデビュー当時から期待が大きいんだが、なぜかもう一皮向けそうで向けない人だ。
新人時代はその「素人っぽさ」も魅力と思わないでもなかったが、さすがに最近はいつまでたっても素人っぽさの抜けないのに若干嫌気がさしてきた。
この作品も随所に「う~ん。。。。。。」と頭を抱えたくなるところがあり、小説の世界に安心してどっぷりつかることができない。
人生経験の少なさというのは「新本格派」の作家たちが大なり小なり抱えていた問題だと思うが、山口雅也のように「小説の中のリアリティ」に自覚的であった人からそれほどでもなかった人まで、自分ながらのやり方で解決しようと足掻いてそれなりの成果を上げつつある中にあって、元々比較的リアリティに立脚してきた貫井徳郎が一番、上手くいっていないような気がする。
読者としては「小説世界の中のリアリティ」があれば良いのであって、読んでいる最中に白けることがあったら作者の負けだと思う。
ミステリーとしての仕掛けもかなり冒頭部分でバレバレであり、ミステリーとしても評価できない。