2013年 06月 07日
2013年6月6日 「不眠の森を駆け抜けて」 白坂依志夫
「不眠の森を駆け抜けて」 白坂依志夫 (ラピュタ)
これは本年度の有力なベスト5候補!
白坂といえば増村保造の映画の脚本家として有名だが、正直、あまり印象がなかった。
いや、映画そのものには感銘を受けているのだが、その栄誉はすべて監督である増村保造に行ってしまい、脚本家である白坂には焦点があたっていなかったような気がする。
しかし、よくよく考えてみれば、あの「暖流」の「新しさ」は、左幸子が機関銃のように話す台詞に多くを負っているのは間違いなく、日本のヌーベルバーグの先駆は、増村と白坂だったというのは真実だと思う。
このエッセイ集ともつかぬ本は、エッセイ集ということから連想されるようなそんな甘い内容でなく、本気で骨身を削って芸術を作り出した作家の魂の記録である。
更にこの作者お得意の芸能人などの下ネタの暴露や、皮肉な視点に貫かれた脚注も(下種な根性と思いつつ)惹かれてしまうおいらであった。。。。。。
石原慎太郎が、皇太子(今上天皇)に投石した少年に会い、「天皇制はなくなるときがくる」と文章で発表していたり、仇敵の小林信彦の意地悪を皮肉ってみたり。
池部良に対する文章で「池部の持つ、天性の美貌と知性をかねそなえた現代性に対するドン百姓たちのジェラシーが(いじめを生んだ)」と書いているが、これはまさしく小林信彦たちの白坂への振る舞いのことを言っているのだろう。
他にも左幸子(バタヤンにさんざん弄ばれたって書いてある)とのお忍び旅行の写真があったり、安部公房が山口果林の上で腹上死した話など。
すごい!